令和5年税制改正された相続時精算課税制度をわかりやすくご紹介!
2023.05.06
こんにちは!不動産売買をサポートする八城地建の酒井です。
生前贈与をするための方法の一つに「相続時精算制度」があります。
この制度が令和5年度の税制改革で改正されることになりました。
「改正は知っていたけど、どのようになるのだろう」「自分に関係のある改正なのだろうか?」と気になっている方も多いのではないでしょうか。
そこで今回は改正された「相続時精算課税制度」についてわかりやすく解説します。
同じく生前贈与の方法である「暦年贈与」とどちらを選べば良いかも、あわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
令和5年度に改正された相続時精算課税制度をわかりやすく解説!
「相続時精算課税制度」は、生前に財産を贈与する際に利用できる制度の一つです。
保有している財産が多い場合や、会社の事業継承などで使われることの多いこの制度について、まずは解説します。
相続時精算課税制度とは
「相続時精算課税制度」は、60歳以上の両親や祖父母から、18歳以上の子や孫への贈与の際に使える制度です。
合計2,500万円までの贈与について非課税となり、2,500万円を超えた部分に対しては、一律20%の「贈与税」がかかります。
「相続時精算課税制度」の主なポイントは以下の通りです。
- 合計2,500万円まで「贈与税」が非課税
- 相続時には相続財産に贈与した財産を足し戻し、その分に相続税がかかる
- 一度「相続時精算課税制度」を選択すると「暦年課税制度」には戻せない
- 少額の贈与であっても申告が必要
つまり、相続税という側面から見ると、いつ財産が移譲されるかの違いがあるだけで、相続税の金額自体は変わらないということになります。
相続時精算課税制度についてさらに詳しくは「相続時精算課税制度とは?メリットや注意点も交えて詳しく解説!」でも解説しています。
ぜひ、参考にしてください。
税制改正前と改正後の内容比較
令和5年度の税制改正に伴って、相続時精算課税制度も改正され、これまで課題となっていた部分の控除が創設された形となりました。
創設された主な控除は以下の通りです。
- 年110万円までの基礎控除
- 贈与された土地や建物が被災した場合の控除
それぞれをわかりやすく解説します。
年110万円までの基礎控除
これまで2,500万円を超えた部分については一律で20%の贈与税がかかっていましたが、改正後は、合計2,500万円以外に年間110万の基礎控除が適用となります。
適用は令和6年1月1日以降の贈与分からです。
基礎控除の部分については贈与税も相続税もかかることはなく、申告の必要もありません。
贈与された土地や建物が被災した場合の控除
これまでの相続時精算課税制度では、贈与された土地や建物といった財産が被災などで価値が下がった場合でも考慮されませんでした。
それが今回の改正で見直され、土地の相続後に災害などの被害を受けて評価額が下がった場合、その被害相当額を贈与時の価額から控除できるようになりました。
この控除は、令和6年1月1日以降の災害に対して適用となります。
相続時精算課税制度は使いやすくなる?
気になるのは、実際に制度の改正によって使いやすくなるのか、という点でしょう。
「相続時精算課税制度」の改正という側面だけを考えると、これまでの贈与税非課税枠の2,500万円という制約を実質的に増額することができるため、使いやすくなることは間違いないでしょう。
また、今までは少額でも贈与が発生した年は贈与税申告が必要でしたが、贈与額が基礎控除の110万円以下の場合は申告が必要ないことも、使いやすくなる理由の一つです。
ただし、相続時精算課税制度を使った方がお得になるか?という側面で考えると、必ずしもお得とはいえない部分もあります。
それは、相続する財産の額や相続人数、贈与する側の現在の年齢、健康状態など、さまざまな要素が絡んでくるからです。
状況によっては、相続時精算課税制度とは別の制度を利用した方が良い場合もあるといえますので、専門家に一度相談するのが良いでしょう。
このほか、令和5年の税制改正で変更のあった特別控除について、「相続空き家の3,000万円特別控除とは?税制改正での変更点もチェック!」のコラムもありますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
税制改正後は相続時精算課税と暦年課税のどちらがお得?使い分け方も解説
もう一つ、財産の贈与に使用できる制度に「暦年贈与」があります。
令和5年度の税制改正で相続時精算課税制に年間110万円の基礎控除が創設されたことによって「暦年贈与とどう違うの?」と疑問に思う方もいることでしょう。
そこで、改めて「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の違いを含めて解説します。
暦年贈与の概要
暦年贈与とは、年間110万円までであれば、贈与税がかかることなく財産を移動できる制度です。
贈与税が非課税となるだけでなく申告も必要ないため、毎年コツコツと長い年月をかけて財産を移動させるのには使いやすい制度といえます。
注意点として暦年贈与の場合、相続が発生した時から過去にさかのぼって、相続財産として加算される点です。
令和5年度の改正により、さかのぼる期間が相続開始の3年前から7年前へと延長されることとなりました。
2つの制度の違いをわかりやすく紹介
ここで「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の違いを比較しておきましょう。
2つの制度の大きな違いは以下の通りです。
- 暦年贈与は、長期にわたって毎年110万円以内の額を贈与税非課税で移動できる
- 相続時精算課税制度は、一回に2,500万円以内の金額を贈与税非課税で移動できる
今回、相続時精算課税制度に年間110万円までの基礎控除ができたことによって、一気に大きい金額を贈与した上で、暦年贈与と同じように年間110万円まで非課税で贈与できるようになりました。
一方で注意点もあります。
その一つが「小規模宅地等の特例」との併用ができないことです。
小規模宅地等の特例とは、相続や遺贈によって土地を取得した時に、相続税評価額の最大80%を減額できる制度ですが、相続時精算課税制度は贈与の仕組みであるため併用ができなくなります。
どちらがお得?使い分けについて
「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」のどちらがお得か?については、相続の状況によって変わります。
ここでは「暦年贈与」と「相続時精算課税制度」の使い分けについて解説します。
暦年贈与がおすすめの方
暦年贈与がおすすめなのは、以下のような方です。
- 贈与対象者が多い方
- 相続予定の財産が基礎控除額よりも多くない方
- 相続までに時間がたくさんある方
暦年贈与には人数制限も贈与対象者の制限もないため、贈与したい対象者が多い方には向いている制度です。
また、相続税の計算をする際には相続額の基礎控除を始め、配偶者や未成年者、障害者などへの控除など、さまざまな控除があります。
加えて、土地や建物が含まれる場合にも併用できる控除があるため、相続予定の額と照らしあわせて考えてみるのも良いでしょう。
贈与税の配偶者控除や住宅取得等資金についての控除など、暦年贈与と併用して使える特別控除については「相続税から税額を差し引ける贈与税額控除を解説!税制改正部分も確認」でも紹介しています。
ぜひ、ご参照ください。
さらに、健康に自信がある比較的若い世代の方には、申告手続きなどの手間をかけることなく、長い年月をかけて財産の移動ができるため、暦年贈与がおすすめといえるでしょう。
相続時精算課税制度がおすすめの方
相続時精算課税制度がおすすめなのは、以下のような方です。
- 比較的高齢の方
- 短期間で大きな金額を移動したい方
- 将来値上がりしそうな財産がある方
令和5年度の改正で、相続時精算課税制度に年間110万円の基礎控除枠ができたことによって、比較的高齢の方が、相続人の負担にならない形で贈与したいと考える場合にも使いやすい制度になったといえます。
また、事業継承などで一度に大きな金額を移動させたい方はもちろん、将来値上がりしそうな財産がある方にも相続時精算課税制度がおすすめです。
それは、相続時精算課税制度を利用することによって、相続時の評価額は贈与の評価額となり、節税対策になるからです。
逆に、一時的に値下がりしてしまっている財産がある場合も同様に節税効果が見込まれるでしょう。
相続時精算課税制度の改正で増える選択肢
今回は「相続時精算課税制度」の改正について解説しました。
相続時精算課税制度は、生前贈与の際に使用でき、2,500万円までが贈与税非課税となる制度です。
この制度が令和6年1月1日より、いくつか改正されることになりました。
主なポイントは「年間110万円までの基礎控除の創設」「贈与された土地や建物が被災した場合の控除」の2点です。
贈与に関してはその他に「暦年贈与」の制度もあります。
税制改正によって、どちらも年間110万円までの基礎控除ができますので、選択肢が増えた形になりました。
どちらを利用するか、迷う方も多くなることでしょう。
利用に関しては、相続する人の状況や財産の内容などによって大きく変わります。
特に、土地や建物などの不動産がある場合は、併用できる制度との兼ね合いが複雑になりますので、専門家に相談するのが良いでしょう。
札幌市南区、北広島、恵庭で不動産の売却を含めた相談をする際には、八城地建までお気軽にご連絡ください。
相談は無料で承っています。