相続した不動産を売却する流れを解説!揉めないための方法や節税対策も
2024.01.30
こんにちは!不動産売買をサポートする八城地建の岩瀬です。
不動産を相続する予定がある方の中には「相続した後どうしよう」と考えている方もいるのではないでしょうか。
兄弟姉妹など相続人が複数いる場合は、揉めないためにも不動産は売却して、利益を公平に分割しようと考えているかもしれません。
そこで今回は、相続した不動産を売却する場合の流れについて解説します。
遺産を分割する際に揉めないための準備や、相続・売却に伴う控除などの節税対策もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてくださいね。
相続した不動産を売却する流れを注意点と共に確認!
まずは、相続した不動産を売却する流れと、相続や売却に伴う注意点を解説します。
不動産を売却するまでの流れ
相続した不動産を売却する際の基本的な流れは次のようになります。
- 相続発生
- 遺言書の有無を確認
→遺言書がある場合:遺言書に従って遺産を分割
→遺言書がない場合:相続人を確認・遺産分割協議 - 名義変更:法務局への相続登記
- 不動産の査定・不動産業者への依頼
- 売買契約を締結
- 決算・引き渡し
- 換価分割の場合は利益を分割
- 確定申告
遺言書がある場合はその内容が最優先なので、遺産分割協議は行いません。
遺産分割協議の時期や期限については法律上定められていませんが、四十九日が過ぎるのを待ってから相続手続きを開始される方が多いです。
故人がまだこの世にいる内に、お金の話をするのは不謹慎に感じることが理由の一つのようです。
相続人が決まったら、売却する場合は必ず被相続人の名義から不動産を相続する相続人へ名義変更をする必要があります。
大量の書類を収集する必要があるため、できるだけ早めに行うのがおすすめです。
不動産業者と結ぶ媒介契約には「専属専任媒介契約」、「専任媒介契約」、「一般媒介契約」の3種類があるので、物件に合った選択をしましょう。
買主が決まって売買契約をする際には売買契約書を取り交わします。
顔合わせ後に不動産の説明を行い、売買契約書の確認・記入・押印をし、手付金を受け取るという流れです。
手付金はお互いに契約を簡単にキャンセルできないためのもので、後に売買代金に充当します。
決済日当日までには、電気水道ガスなどの契約解除、残置物の片付け、買主へ渡す物の準備をしておきましょう。
売主の所有権移転と物件引渡し、買主の決済は通常同時に行います。
住宅ローンの融資の実行が完了したら買主は売主へ残代金と清算金を渡し、売主は買主へ領収書と物件のカギを渡して引き渡しが完了です。
相続から売却までに気をつけるべき3つの注意点
前述の流れの中で特に気をつけるべき3点をお伝えします。
- 遺言書と相続人の確認
- 遺産分割協議と3つの遺産分割方法
- 換価分割の場合の名義変更
注意点①遺言書と相続人の確認
相続が発生したら、遺言書があるかどうかを確認しますが、またその遺言書が有効かどうかも確かめることが1つ目の注意点。
まず法的に定められた様式で記載されているかどうかが重要な判断点です。
日付や署名、押印があれば遺言書は有効です。
遺言書は法務局か公証役場に保管されていることが多く、この場合は間違いなく有効ですが、自宅などで遺言書を見つけた場合は、開封せずにそのまま家庭裁判所に提出しましょう。
後日指定された日に家庭裁判所へ向かい、遺言書の検認に立ち会います。
認知能力がない方が書いた遺言書であった場合などは、その遺言書は無効となることもありますが、細かく確認すると相続を実現させられるケースもあるため、弁護士、司法書士、行政書士などの専門家に相談するのがおすすめです。
有効な遺言書がない場合は、法定相続に従って相続します。
法定相続の際には、まず相続人を確認しますが、配偶者がいる場合、配偶者は常に相続人になります。
配偶者以外の相続の範囲は、次の通りです。
- 第1順位:死亡した人の子ども(子どもが死亡している場合は子どもの直系卑属)
- 第2順位:死亡した人の直系尊属(父母や祖父母など)
- 第3順位:死亡した人の兄弟姉妹(兄弟姉妹が死亡している場合は、その子ども)
上の順位の相続人がいない場合に、下の順位の人が相続することになります。
つまり、第1順位の相続人がいなければ第2順位、第1、第2順位の相続人がいなければ第3順位という形です。
注意点②遺産分割協議と3つの遺産分割方法
配偶者だけでなく子どもに兄弟姉妹がいるなど、相続人が複数人になる場合は、遺産分割のための協議が必要です。
遺産分割には3つの方法があります。
- 現物分割:現物のまま相続する
- 代償分割:1人が一括相続したあと、相続分のお金を支払う
- 換価分割:財産を売却してお金に換えて、売却金額を分割する
「換価分割」では売却に全員の同意が必要なため、揉めないためにも話し合いをスムーズに進める必要があります。
揉めないためのポイントも後ほどご紹介しますので、ぜひ参考にしてくださいね!
注意点③換価分割の場合の名義変更
不動産を相続すると、法務局に名義変更を申請する「相続登記」が必要である点にも注意しましょう。
現物分割、代償分割の場合は、代表者1人が名義変更登記をしますが、換価分割の場合は以下の2種類の登記方法があります。
- 共同登記:相続人全員の名義に書き換える
- 単独登記:相続人の代表者1人の名義に書き換える
共同登記の場合、代表者選びによるトラブルを回避できるメリットがある一方で、相続した不動産の売却時に手間がかかるデメリットがあります。
全員が不動産売買の当事者となるため、売買のための媒介契約、売買契約書、重要事項説明書などに、全員の同意と押印が必要となるからです。
単独登記の場合は、売買時に代表者1人で手続きを進められるのがメリットですが、最初の話合いで相続人の間で意見が合わないと、トラブルに発展する可能性があります。
複数人で不動産相続をする際に揉めないための重要ポイント
残念ながら、いくら仲が良くても、相続に際して兄弟姉妹などでトラブルが発生してしまうことはあります。
複数人で不動産を相続する場合は特に、後で揉めないよう十分に準備と話合いをする必要があるでしょう。
ここでは、不動産の遺産分割で揉めないための重要なポイントについて解説します。
そのポイントは、次の2点です。
- 換価分割で公平に分割する
- 相続発生前の十分な話し合い
ポイント①換価分割で公平に分割する
複数人で遺産分割する場合、トラブルの元となるのは主に「不公平感」です。
不公平感によるトラブルを回避するためには、換価分割を選択するのがおすすめです。
現物分割や代償分割の場合、分割して相続した遺産の評価に対して、評価基準や評価額の違いから、不公平感が増すことがあります。
換価分割の場合は、不動産を現金化することで1円単位まで均等に分割できるため、基準や
額に対する不公平感が募ることはありません。
その他、換価分割は相続人に資金力がなくても進められる点がメリットです。
現物分割で不動産を相続した場合には、別途、相続税を払う資金、が必要となります。
また、代償分割の際には代表者が他の相続人に支払うための資金が必要になります。
さらに換価分割にすることで、すべての相続人に対して、不動産を管理するためのコストや固定資産税・都市計画税などの税金の負担がなくなります。
ただし、換価分割の際、「実家を売却するのに抵抗がある」という相続人が出た場合、他の方法が取れないかなどをしっかり話し合い、相続人全員が納得してから進めることをおすすめします。
ポイント②相続発生前の十分な話し合い
相続に関わるトラブルを回避するために、被相続人(親)が生きている間に十分話し合っておくことが大切です。
生前に決めておくべき内容には、次のような項目があります。
- 介護や認知症対策について:青年後見制度、任意後見制度、家族信託など
- 不動産の活用や売却について:不要な不動産を先に売却しておくなど
- 遺言書と被相続人の意向について:財産分与や分割方法についての考えなど
- 節税対策について:生前贈与など
話し合いの重要なポイントは、被相続人の意向を尊重することです。
意向に添う形で分割できるのが望ましいですが、話し合いが難航しそうなときや進め方に不安があるときは、弁護士や司法書士などの専門家に相談するのも良いでしょう。
不動産を相続した際・売却する際にかかる税金と節税対策
不動産の相続や売却には税金がかかります。
具体的には、相続にかかる相続税、相続による名義変更にかかる登録免許税、売却の際の売買契約書に必要な印紙税、不動産を売却して利益が出た際にかかる譲渡譲渡所得課税、売買の仲介手数料にかかる消費税です。
できるだけ支払う税金を抑えるために、相続税の課税対象から差し引けるもの、相続税や相続不動産の売却で利用できる特別控除・特例制度についてご紹介します。
また、相続税の申告方法もお伝えしますので、ぜひ参考にしてくださいね!
相続税の課税対象から差し引けるもの
相続税の対象となる遺産額を算出するためには、まず遺産総額から非課税財産・葬式費用・債務などを差し引きます。
その金額に相続開始前3年以内の贈与財産を加算したものが、正味の遺産額です。
そして、正味の遺産額から基礎控除額を差し引いたものが「課税遺産総額」です。
基礎控除額は、「3,000万円+(600万円×法定相続人の数)」です。
なお、課税遺産総額がマイナスになった場合は、相続税は発生しません。
相続税や相続不動産の売却で利用できる特別控除・特例制度
活用できる特別控除・特例制度の中で代表的なものをご紹介します。
相続税で活用:配偶者の税額軽減
配偶者は次の金額のうち、どちらか多い金額までは相続税がかかりません。
- 1億6,000万円
- 配偶者の法定相続分相当額
法定相続分とは、複数の相続人の間で遺産分割が合意しなかった場合の遺産の持ち分です。
配偶者の他の相続人が、第1順位(子ども)の場合は1/2、第2順位の場合は2/3、第3順位の場合は3/4が、配偶者の持ち分になります。
相続税で活用:未成年控除
相続人が未成年のときは、相続税の額から一定金額が差し引かれます。
主な条件は、日本国籍であることや日本国内に住所があること、相続や遺贈で財産を取得したときに18歳未満であること、などです。
未成年者控除の額は「満18歳になるまでの年数×10万円」で計算されます。
相続不動産の売却時に活用:相続財産を譲渡した場合の取得費の特例
「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」では、相続税の申告期限の翌日から3年以内に不動産を売却した場合、相続税の一定額をその不動産の取得費として加算できます。
相続不動産の売却時に活用:居住用財産を譲渡した場合の3000万円控除
以下の2つの特例も活用可能です。
「マイホームを売却したときの特例」は、直前まで住んでいた家、もしくは住まなくなってから3年経過する年の12月31日までの間に売却する場合、一定条件を満たせば、譲渡所得から最高3000万円の特別控除が適用になります。
被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例は、生前に被相続人が住んでいた居住用財産を売却する場合、一定条件を満たせば、譲渡所得金額から最高3,000万円までの控除が適用になります。
空き家のまま売却せずに保有することは、税負担の面からもリスクが大きいです。
空き家に関わる税金については「空き家の固定資産税が6倍になるのはいつから?法改正で対象が増える!」で詳しく解説しています。
また、相続不動産の売却による税金や節税対策については「相続した不動産を売却する際に支払う税金は?節税方法もチェック!」のコラムでも詳しく解説していますので、ぜひ参考にしてくださいね。
相続税を申告する方法|期限内の手続きが必須
相続税は、被相続人が亡くなったことを知った翌日から10カ月以内に税務署に申告する必要があります。
申告時に、遺産分割方法についても申告するため、この期限までに遺産分割協議をしなければなりません。
期限内に申告しなかった場合、納税額によって最大30%の「無申告加算税」が課されます。
また、納税期限を過ぎた場合も「延滞税」が課され、納税額が増えることになりますので、注意が必要です。
不動産の相続が発生した場合でも同様に課税されるため、相続不動産の分割方法や売却については、期限に間に合うよう早めに決定することが重要になります
相続不動産の売却は流れを押さえてトラブル回避を
相続が発生した場合、遺言書があれば、それに従って分割しますが、遺言書がなかった場合は、遺産分割協議をします。
特に不動産は複数の相続人に公平に分配するのが難しいため、売却して現金化した後、相続人で均等に分配する「換価分割」がおすすめです。
相続不動産の売却には相続人全員の同意が必要ですが、売却することで長期保有によるコストや税金の負担も軽減できるだけでなく、相続人間でのトラブルが回避できます。
複数の相続人がいる場合、公平感のない分割は揉める原因となります。
トラブルを回避し、スムーズに遺産分割を進めるためには、事前の十分な話し合いが重要な要素となるでしょう。
また、話し合いが長期化し、遺産分割が合意できずにいると、期限までに納税できない恐れがあります。
税制上の優遇措置や特例、特別控除などを適用するためにも、相続不動産の活用や売却については早めに話し合い、準備しておくのが良いでしょう。
札幌市南区、北広島市、恵庭市で相続不動産の売却を検討されている方は、八城地建までお気軽にご相談ください。
ご相談は無料で承っています。