相続時精算課税制度とは?メリットや注意点も交えて詳しく解説!
2023.02.10
こんにちは!不動産売買をサポートする八城地建の酒井です。
今回は不動産の売却にも大きく影響することがある相続のお話です。
その中でも今回は特に「相続時精算課税制度」について取り上げてみたいと思います。
「相続にかかる税金が不安」「相続時の税額を低くする方法はないか」「生きている間に財産を贈与しておけないものか」など、相続したい財産や不動産がある場合、不安になる点は多いですよね。
状況次第では大きな節税対策にもなる相続時精算課税制度について、今回はメリットや使うべき状況と合わせて、注意点や使わない方が良いケースについても解説します。
相続時精算課税制度とは?詳しく解説!
まずは「相続時精算課税制度」とは何か、基本部分からご紹介していきましょう。
相続では、不動産や現金、株式など財産を引き継ぐにあたって相続税が課されます。
生前に財産を贈与すると贈与税がかかりますが、相続時精算課税制度を使うと、ある条件のもと、2,500万円までの金額であれば税金がかかることなく生前贈与が可能になるのです。
では、制度について詳しく解説していきます。
相続時精算課税制度の概要
相続時精算課税制度とは、父母や祖父母が、子や孫に財産を贈与する際に選択できる、贈与税の制度のこと。
贈与する側が生きている間に、特別控除や一定の税率で贈与税の計算をおこない、亡くなった時の相続税で精算する仕組みです。
相続時精算課税制度を適用すると、贈与する側は生きている間、全期間を通して2,500万円までの贈与税の特別控除が受けられます。
贈与財産の種類・金額・回数に制限はありません。
贈与する金額で2,500万円を超えた部分については、贈与税一律20%の課税対象となります。
通常、贈与税は累進課税となっており、2,500万円を超えた金額に対しては贈与額に応じて45〜55%もの贈与税が課税されることを考えると、非常にお得な制度と言えるかもしれませんね。
一方で生前に贈与した対象物については、相続時に相続財産として含めた上で相続税額を計算することになるため「単なる税金の先送り」という見方もできます。
相続時精算課税制度の対象条件
相続時精算課税制度を利用するには、対象となる条件があります。
その条件も詳しく見ていきましょう。
贈与者の直系尊属からの贈与であること
贈与した年の1月1日時点で、贈与する側は60歳以上の両親、または祖父母であること。
贈与を受ける側は18歳以上の子、または孫であること
贈与される年の1月1日時点で、18歳を超えた子、孫であること。
ただし、令和4年3月31日以前の贈与の場合は、年齢が20歳を超えていることが条件になります。
暦年贈与との違いは?
相続時精算課税制度を利用しない普通の生前贈与を「暦年贈与」と言います。
暦年贈与は年間110万円までの控除があり、その範囲内であれば贈与税は課税されませんし、特に申告も必要ありません。
年間110万円以上の贈与があった場合は、金額に応じて10%〜55%までの税率で課税されます。
例えば、2,500万円の贈与をおこなうことを考えた場合、暦年贈与の控除内でおこなうとすると23年近くの期間が必要ですが、相続時精算課税制度を利用すると一回でおこなうことも可能です。
贈与額が大きくなればなるほど、その違いも大きくなると言えるでしょう。
相続時精算課税制度のメリットは?どんな場合に使うべき?
相続時精算課税制度の概要を解説しましたが、ここまでではどんな場合にメリットがあるのか、わからない方も多いのではないでしょうか。
ここからは、相続時精算課税制度を利用するメリットと、使った方が良いケースについて解説しましょう。
相続時精算課税制度を利用するメリットや使った方が良いケース
相続時精算課税制度の特徴には、以下のような点があります。
- 大きな金額をまとめて贈与できる
- 贈与時の評価額が、相続時に反映される
- 贈与された人が、そのままその財産を相続することになる
この特徴はケースによってメリットにもデメリットにもなりますが、これからお伝えするケースの場合、大きな節税効果が期待できる内容です。
それでは具体的に、どんなケースだとメリットを得られるのか、この制度を適用した方が良いケースをご紹介していきましょう。
相続財産の総額が基礎控除の範囲内である場合
相続時に課税される相続税にも基礎控除があり、以下の計算式で算出されます。
相続税の基礎控除=3,000万円+(600万円×法定相続人の数)
生前に贈与する財産と相続財産を合計した金額が基礎控除を下回る金額だった場合、将来の相続時に課税されることはないと考えられます。
贈与のタイミングが受贈双方にとってメリットとなる状況ならば、この制度を使うことを検討しても良いのではないでしょうか。
将来、価格が上がりそうな財産を持っている場合
この制度を利用すると、贈与時の価格や価値が相続時にそのまま反映されます。
そのため、将来的に値上がりが期待できる財産を保有している場合は、相続時の評価額を下げることができ、節税効果が高いと言われています。
具体的には、開発計画がある土地や将来が期待できる株などの有価証券、絵画なども対象となるでしょう。
土地や株などが、一時的に値下がりしている時なども贈与のタイミングと言えます。
また、賃貸経営などをしている場合は生前に贈与すると、不動産収入が贈与側から贈与される側の収入となることで最終的な相続財産が減り、節税につながります。
相続でもめることが想定される場合
兄弟姉妹など、相続人が複数いる場合や特定の人に引き継ぎたいと希望する場合にも、この制度は有効に活用できるでしょう。
この制度を利用して生前に贈与された財産は、相続時にも贈与された人がそのまま相続することになります。
そのため、引き継ぎたい人に確実に財産が渡ることとなり、相続でもめる可能性を下げることができるのです。
事業継承を行う場合
親から子などで事業の継承がある場合、会社規模での財産となるため金額が大きく、暦年贈与の範囲内では収まりきらないことも多いでしょう。
そのときにこの制度を利用すると、事前にある程度の資金承継ができるというメリットがあります。
また、税金の先送りにはなるものの、多額の相続税を支払う場合は現金の用意が難しい場合も多いので、支払いまで猶予があるという点も大きいでしょう。
相続時精算課税制度の注意点もチェック
相続時精算課税制度を利用する場合の注意点としては、以下のようなものがあります。
- 金額に関わらず税務署への申告義務がある
- 一度適用すると、暦年贈与には戻せない
- 制度を利用して土地を贈与した場合、その土地に「小規模宅地等の特例」が適用できない
申告については、贈与があった年の翌年2月1日から3月15日までの間に贈与する側の管轄の税務署に提出します。
申告には相続時精算課税制度選択届出書が必要となりますが、書式が変更になることもあるので、国税庁のホームページなどで情報確認しておくのが良いでしょう。
また、相続時精算課税制度のデメリットは、一度選択すると暦年贈与には戻せないという点です。
一度選択すると翌年から、暦年贈与非課税控除枠である110万円が使えなくなります。
将来の相続のことも視野に入れて、どちらを利用するのが得になるのか、よく考える必要があるでしょう。
そして、もうひとつのデメリットが土地の贈与に関係することです。
土地の贈与に関しては贈与税や相続税以外の税金がかかるため、かえって税負担が増える可能性もあります。
贈与する側と贈与される側が一緒に住んでいる場合には、相続時に評価額を減額できる特例を適用できない事態となることにも注意が必要です。
相続時精算課税制度を使わない方が良いケースもチェック
相続時精算課税制度を使わない方が良いケースは、前述した通り、贈与する側とされる側が一緒に住んでいる場合の土地の贈与です。
土地の相続に関しては「小規模宅地等の特例」というものがあり、亡くなった被相続人が居住していた土地について、330㎡を上限に評価額を80%減額できるようになっています。
これは、被相続人が亡くなった後、残された遺族が相続税の負担により自宅を手放さなくてはならないような深刻な事態を避けるために作られた特例です。
相続時精算課税制度を選択すると、この特例を適用できなくなるため、評価額そのままに相続税が加算されることとなり、かえって相続税を上げる結果となるでしょう。
不動産の相続税の計算方法については「不動産の相続税の計算方法は?相続税を抑える方法も解説!」もご参照ください。
また、土地の贈与については贈与税や相続税以外の税負担があります。
贈与に伴う不動産の取得には「登録免許税」と「不動産取得税」が必要となり、登録免許税に関しては固定資産税評価額の2%、不動産取得税に関しては同じく3%の税率で課税されます。
一方で相続時にかかるのは、登録免許税が0.4%で、不動産取得税はかかりません。
相続時精算課税制度は状況と使い方次第でメリットがある
相続時精算課税制度とは、条件が揃えば、2,500万円までの金額であれば税金がかかることなく生前贈与が可能になる制度のこと。
贈与する金額で2,500万円を超えた部分については、贈与税一律20%の課税対象です。
ただし相続の際に、生前に贈与した対象物を相続財産として含めた上で相続税額を計算することなるため、税金の先送りになるともいえます。
そのため、節税対策として誰にでもおすすめできる制度ということではなく、節税効果が高いケースもあれば、利用しない方が良いケースもあります。
特に、土地の贈与に関しては贈与税、相続税以外の税負担や、相続時の節税効果などにも影響するので、わからない場合は専門家も交えて、よく相談するのが良いでしょう。
最近では、使用していない空き家や土地など不動産を生前贈与により取得をしてからご売却される方もいますので、ぜひこのコラムを参考にしていただければと思います。
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