相続空き家の3,000万円特別控除とは?税制改正での変更点もチェック!
2023.04.20
こんにちは!不動産売買をサポートする八城地建の酒井です。
離れて暮らしている実家を相続したとき、またはこれから相続することを考えたときに「相続しても実家に住めない」「売却したいけれど税金が心配」「古い家だけど売却できるのか?」など心配事が多いのではないでしょうか。
今回は、相続した空き家や土地の処分、売却をするときに使える「相続空き家の3,000万円特別控除」について詳しく解説します。
令和5年度の改正に伴う変更点もあわせて解説しますので、ぜひ参考にしてください。
相続空き家の3,000万円特別控除とは?
空き家を相続したときに使える3,000万円の特別控除「相続空き家の3,000万円特別控除(被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例)」は、租税措置法に記載された譲渡所得に関する条項です。
どんな目的で制定されたのか、どんな内容なのか、という点を見ていきましょう。
制度が作られた背景
近年、空き家が社会問題になっていることは、ニュースなどでも取り上げられているのでご存じの方も多いでしょう。
空き家の増加は、離れて暮らす親から実家を相続することをきっかけに発生していることがほとんどです。
老朽化した空き家が増加することで、倒壊の危険や治安の悪化、防犯面での不安などが問題点としてあがっています。
このような背景をもとに、増加する空き家問題を解決する方法として特別控除の特例が作られました。
特例の最大のポイントは「相続した空き家の売却」目的としては、使いにくい制度になっているという点です。
控除が受けられる不動産の対象として定められている「昭和56年5月30日以前の家屋」は旧耐震基準を用いて建てられており、現在の耐震基準は満たしていないことがほとんどです。
「売却する空き家が耐震基準を満たしていること」という矛盾する2つの条件が定められていることから考えると、空き家をそのまま売却するのではなく、更地にして売却することを推奨しているのがわかります。
制度の概要
それでは、制度の概要について確認していきます。
簡単にいうと、相続した不動産を売却した際の譲渡所得から3,000万円を控除することができる特例です。
所得税の基準となる譲渡所得を以下の計算式で算出します。
「譲渡所得」=「空き家の売却価格」-「売却にかかった費用」-「3,000万円の控除額」
この特例を受けるには、売却する家や土地などが対象になっていることに加え、売却の時期や金額、買い主などの要件を満たしていることが必要です。
対象の不動産
控除が受けられる不動産の対象は以下です。
- 相続する直前まで親が居住用として暮らしていた家屋であること
- 昭和56年5月30日以前に建築された家屋であること
- マンションなどではないこと
- 相続してから売却するまでの間、空き家であったこと
- 売却する空き家が耐震基準を満たしているか、更地になっていること
なお、令和元年の税制改正によって、親が老人ホームに入所していたなどの理由によって、相続する直前には居住していなかった家屋についても、必要な書類が揃えば控除対象になりました。
対象の要件
控除を受けるための要件をまとめると、以下のような内容になります。
- 相続または遺贈により取得した家屋、もしくは敷地であること。
- 相続開始日から3年経過する日の属する、12月31日までに売却すること
- 売却代金が一億円以下であること。
- 売却した家や敷地について、他の特例の適用を受けていないこと
- 他の家や敷地でこの特例の適用を受けていないこと
- 親子や夫婦等の関係である人に売却していないこと
相続空き家の3,000万円特別控除の税制改正が延長!変更点は?
特別控除の特例は平成28年に制定され、令和5年12月31日までの譲渡が適用期限となっていましたが、令和5年度の税制改正で適用期限が4年間延長されています。
さらに令和5年度の改正では、売却できる不動産の対象が緩和された一方で、課税強化された部分もあります。
それでは、変更点について詳しく確認していきましょう。
改正の背景とは?
もともと、この制度の適用対象として「耐震基準を満たしている」という条件が定められています。
しかし昭和56年以前の「旧耐震基準」を基に建てられた空き家を売却する際に、この条件を満たすためには、以下のどちらかの方法が必要となります。
- 売り主が耐震リフォームを行った上で売却する
- 売り主が家屋を取り壊して更地にした上で、土地を売却する
この点が、制度を適用するために必要な売り主側の工事費用の負担や工事実施のタイミングが難しいことなどが重荷となり、空き家の処分に対しての支障となっていました。
制度の条件上、空き家の処分や売却に支障が出ていたことから、さらなる空き家の売却を促進するために改正が行なわれたと考えられます。
税制改正での主な変更点は?
令和5年度の制度改正に伴う大きな変更点は以下の通りです。
- 適用期限が4年間延長され、令和9年12月31日までの譲渡が対象となる
- 令和6年1月1日以降の売却については契約時に取り決めをすれば、買い主側で購入後に耐震工事や解体を行う場合でも対象となる
- 令和6年1月1日以降の売却について、相続人の数が3人以上の場合は特別控除額を1人2,000万円を限度とする
令和5年度の改正で適用期限が延長されたことにより、特例を適用して空き家の売却が一層進むことが予想されます。
さらに、対象となる条件を満たすために、売り主側で工事費用の負担や工事のタイミングなどを考慮する必要が無くなりました。
買い主側にも、購入後の選択肢が増えるというメリットがあるため、空き家の売買が行いやすくなるといえるでしょう。
とはいえ、購入後に買い主側で工事を施すことで制度を適用させるためには、売買契約書への特記事項の記載など細かい要件があります。
また、今後の税制改正でもまた変更があることが予想されます。
判断が難しい場合には不動産会社に相談することをおすすめします!
相続した家が田舎で、売却で困ったときは「『田舎の家が売れない』を解決!売る方法や、それでも売れない場合は?」のコラムも参考にしてくださいね。
相続空き家の3,000万円特別控除の申請方法も確認
相続空き家の3,000万円特別控除の適用を受けるためには、確定申告時に所定の書類を添えて提出する必要があります。
手続きに必要な書類は、概ね以下の通りです。
- 譲渡所得の内訳書(確定申告書付表兼計算明細書)
- 売却資産の登記事項証明書(売却する不動産が対象であることが分かる証明書)
- 被相続人居住用家屋等確認書
- 耐震基準適合証明書または建設住宅性能評価書の写し
- 売却代金が1億円以下であることが分かるもの
そのほか、親が老人ホームなどに入居していた場合は、要介護認定などが確認出来る書類や老人ホームなどの入所契約書の写しなどが必要になります。
上記の書類を揃えたら、売却が行なわれた翌年の3月15日までに確定申告します。
詳しくは国税庁のホームページもご覧ください。
必要な書類は、解体を行うかどうかや自治体によっても異なるため、事前に確認しておきましょう。
相続空き家の3,000万円特別控除と併用できる控除・特例もある?
相続空き家の3,000万円特別控除については「他の特例の適用を受けていないこと」という要件はありますが、なかには併用できる控除や特例もあります。
そのうち、以下の2つの特例を解説します。
小規模宅地等の特例
小規模宅地等の特例は、親などが居住用としていた宅地を相続した場合、330平方メートルを限度に80%の割合で、相続税の課税価格が減額される制度です。
基本的には相続税の申告期限まで自宅を所有し、住み続けていることが必要ですが、一定条件を満たすことで、相続後に空き家となった場合にも小規模宅地等の特例を適用することができます。
マンションなど賃貸住宅に住んでいる相続人を想定とした条件となっていることがポイントです。
詳しい条件については国税庁の小規模宅地等の特例をご覧ください。
マイホームを売ったときの特例(居住用不動産の3,000万円特別控除)
マイホームを売却した際の売却益に対して適用できる3,000万円の特別控除。
所有期間に関わらず、最高3,000万円の控除ができる特例です。
これは相続空き家の3,000万円特別控除と併用できますが、併用する場合は、両方を合わせても、3,000万円が限度となるので注意が必要です。
詳しい内容は国税庁のマイホームを売ったときの特例をご覧ください。
相続はしたけれど、今後不動産を使わないという方は、補助金もチェックして売却を考えてみてはいかがでしょうか?
「相続した不動産がいらない!その場合の対処法や注意点を確認」でも詳しく解説していますので、ぜひチェックしてみてくださいね。
相続空き家の3,000万円特別控除が適用の内に売却!
今回は、空き家を相続する際に使える3,000万円の特別控除について、概要と要件、令和5年度の税制改正に伴う変更点についても解説しました。
この制度は、増え続ける古い危険な空き家を取り壊して処分を進めることを意図して作られています。
空き家のままで売却することを考えると条件は厳しく、使いにくい点もありますが、令和5年度の税制改正により売却する側の負担が軽減され、空き家の処分が進む可能性が高まりました。
とはいえ、売買契約書に記載する要件は細かい点が多いため、実際に売却を検討する場合には、不動産会社に相談するのが良いでしょう。
制度を適用するには、売却した翌年の3月15日までに必要な書類を添付して確定申告する必要があります。
書類の中で、管轄の役所に申告が必要なものは、取得までに時間がかかる可能性もありますので、できるだけ早いタイミングで動くようにしましょう。
札幌市南区、北広島、恵庭で不動産の売却についてお困りの際は、八城地建にお気軽にご相談ください!